大学入試の数学の問題には,高校の範囲を超えた数学の知識があって初めてその本質を理解できるものがある。そういう問題とその本質を紹介する2冊。

『プロの数学』(プロの定義は不明)は,その大部分が線型代数と解析になっていて,大学の教養の数学にそのままつながりそう。『大学数学への道』はそういうことにこだわらず,興味深い話題をいろいろ紹介してくれる。

こういう企画は面白いし読んでいて勉強にもなる。しかし,こういう企画が成り立ってしまうことが,大学入試の欠陥を表しているとも思う。大学入試なのだから,高校で学ぶ範囲でその本質を理解できるものを出題するのが理想だと思うのだが,それでは入試が成り立たないということなのだろう。

この本で取り上げた大学入試問題は,すべて東京大学と京都大学の過去出題問題になりました。いろいろ考えた結果,こうなりました。(『プロの数学』p.v)

東大と京大の問題の質が一番よかったということだと初めは解釈したが,東大と京大の問題が特に理想から遠いおかげでネタにできたということもあるかもしれない。

問題に書かれていない本質を捉えるためには「出題者の意図」を探ることが必要で、『プロの数学』にはそういう表現が何度も出てくる。出題者の意図を探ることが、数学のトレーニングにおいてよいことなのかどうか考えさせられる。