新刊のご案内:『Webのしくみ』
矢吹太朗『Webのしくみ Webをいかすための12の道具』(サイエンス社, 2020)
初等教育でITを教える教師や、初等教育を受ける子供の親を想定読者として企画された、コンピュータ&ウェブ・サイエンス・ライブラリの第6巻、内容はウェブ総論です。
私がこれまでに書いた本の想定読者はエンジニア(のタマゴ)でしたが、この本の想定読者はすべての大人(と13歳の頭のいい連中)です。 ですから、今この文章を読んでいるあなたはおそらく想定読者です。(書店へどうぞ。)
レビュアーの一人であるyomoyomo様がすばらしい紹介を書いてくださったので、そこから引用します。
例えば、スマホを毎日使っているけど、ウェブがどういうものか実はよく分かっていないことに漠然と不安を感じていて、一度網羅的に基本を押さえたいという人は、いわゆる「文系」の人には多いと思う。そうした人にも遠慮なく勧められる本である。(https://yamdas.hatenablog.com/entry/20201026/web-no-shikumi)
ウェブについて、子供に何か教えなければならない状況を想像してみてください。 何を題材にするでしょうか。 検索? SNS? HTML? オンラインショッピング?
少し詳しい人ならURL・HTTP・HTMLかもしれません。 そういう技術的なことの他に、検索サービスのビジネスモデル、ソーシャルメディアの問題、ウェブの信頼性などの話題も入れたいところです。
「気を付けて使いましょう」とか「ウェブは信用できない」みたいなことを子供に言いたい人は多いと思いますが、では具体的に何に気を付けたらいいのでしょう。 どういうところが信用できないのでしょう。
選んだ題材で、必要なことがすべて網羅できているでしょうか。 大切なことを伝え忘れていないでしょうか。 そういうことに不安を感じる大人のために、この本は書かれました。
選んだ話題は次のとおり、全12章です。(正確には第0章を含む全13章)
- ハイパーメディア
- 検索
- 自分のメディア
- ライセンス
- シェア
- アカウント
- クラウド(群衆)
- 暗号
- ウェブアプリケーション
- データベース
- クラウド(雲)
- 間接参照
ウェブでできることを思い浮かべると、たいていはこれらの組合せになっているはずです。 そういう意味で、網羅的です。
上の12個を、子供たちに持たせたい道具(あるいは武器)として紹介しています。 子供たちが将来、自分が直面する問題の解決に、これらの道具を役立ててくれることを願います。
ウェブが生まれたのは1989年、わたしが13歳の頃です。 ダグラス・ホフスタッターをまねて、「わたしが13歳の頃に興味をもっていたような事柄に関心のある、13歳の頭のいい連中」に読んでもらいたい、とは言えません。 13歳の頃の私はウェブには何の興味ももっていませんでしたから。 とはいえ、13歳くらいになれば読めるように、小学校で学ばない漢字には、各章での初出時にルビを振っています。
内容についてもう少し詳しく知りたい方は、サポートサイトにまとめてある、図・参考文献・URLなどをご覧ください。
内容とは別に、「子供を意識して書く」気分に関して最も影響を受けたのは、稲垣理一郎・Boichi『Dr. STONE』(ジャンプコミックス)です。 誰も気付かないでしょうし、自分でもそのうち忘れそうなのでここに記録しておきます。