『ゲーデル・エッシャー・バッハ』(GEB)で書いたはずの「生命のない物質から生命のある存在がどのように生まれるか」という問いへの再挑戦。

表紙ホフスタッター『わたしは不思議の環』

白揚社編集部の後記によると,GEBは「二段組,700ページを超えるボリューム,4800円という高価格の本」だったとのことだが(現在は5800円+税),本書は「一段組,600ページ,5400円」だから,ページ単価はこちらのほうがかなり高い。(ちなみに,原著Kindle版は825円)

原書が出版された2007年頃ならともかく,2018年にもなってこの翻訳が出るということは,自分がGEBを楽しんだ最後の世代だという私の感覚は間違っていたか。

表紙デネット『心の進化を解明する』

とはいえ,友人として何度も登場するデネットの『心の進化を解明する』が,原書の出版(2017)から1年で翻訳されているわけで,「GEBを読めばいい」ということはあったのかもしれない。

表紙ホフスタッター『ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版』

自伝的要素があまりないGEB(20周年記念版の序文は例外)と比べて,自伝的要素が多い。それで,1冊だけ残すならやはりGEBなのだが,GEBの副読本的な楽しみはある。目次が浅いのと,索引がかなり端折られているらしいのが残念(例:読み終わってから,そういえば朝永振一郎ってどこで出てきたっけ?と思っても,なかなか見つからない。)。

細かい話:同音異義語の例の翻訳としては橋と箸(p.17)は適切? Godelの中にGodがあることを訳すのは難しそう(p.293)。ツウィン世ン界(p.323),ペアソナル(p.327),干ロ草フィー(p.495),英語の痕跡をなくすのは難しそう。「高価で高速の」→「高価で高速な」?(p.367)